未入金とは、売掛債権として取り扱っている未回収のお金のことです。本来入ってくるはずの資金を回収できないと自社のキャッシュフローに悪影響を及ぼす可能性があるので、売掛債権を取り扱う上で最大のリスクとなります。
そこで本記事では未入金の回収手順をはじめ、そもそも未入金を発生させない仕組みづくりまで解説します。もし、自社の経理でこれまで経験がなくても、いつ発生するかわからないものなので、本記事を参考にして適切な対応や回収手順の知識を身につけましょう。
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未入金とは?未収入金と違い
※「未入金の意味を知っている」という方は次章「【対処法】未入金が発生したときの6ステップ」からご覧ください。
未入金とは、売掛金のうち支払いが済んでいないお金のことをいいます。単純に払い忘れている、払える状況にない、故意に支払いをしていないといったさまざまな要因が考えられます。
未入金が自社のキャッシュフローに悪影響があることは言うまでもありませんが、特に大きな売掛金の取引先であった場合、自社が受けるダメージは計り知れないでしょう。
なお、「未入金」と似た言葉に「未収入金」という言葉があります。
未入金は本来業務(売買やサービス提供)などによって、発生した売掛金の未回収分を言うのに対して、未収入金は営業以外で発生し回収できていない金融債権のことを言います。
つまり、未入金と未収入金の違いは本来業務による債権か否かと捉えて差し支えありません。
- 未入金:商品売買やサービス提供など本来業務に係る未回収債権
- 未収入金:不動産売却や有価証券売却など本来業務外の未回収債権
例えば、会社員や個人事業主の方が本来業務で発生した未回収債権は未入金となることを覚えておきましょう。
未入金で生じるリスクについては「売掛金回収の最も効率的な方法とは|未回収時の対処法も紹介」でも解説しています。
【対処法】未入金が発生したときの6ステップ
もし実際に未入金が発生した場合、まず何をしたらいいのでしょうか。
未入金は簡単な事務のミスで発生することが多く、請求忘れなど自社に落ち度がないか確認するのは基本的な対応ですので、この章では自社に原因がないかをチェックし排除した状態で取るべき行動を解説します。
1. 請求書が送付できているかを確認する
まずは「請求書が相手に届いているか」を確認してください。郵送の場合、一般的な普通郵便で送った際は追跡ができません。
一方、電子メールであれば送信履歴から、請求書を添付したメールが送れているかを確認できます。
取引先に連絡する際にも、メールを送った日時や件名がわかっていたほうがスムーズにやりとりできるため、確認しておきましょう。
送った日時を確認した結果、締日を過ぎてしまっていたため、受領されていないことが判明するかもしれません。
2. 取引先に未収金があることを連絡する
自社が確実に請求書の送付を行っており、落ち度がないことを確認したなら、取引先に未入金があることを連絡します。
「故意に入金をしていない」「支払える財政状況にない」以外であれば、以下のような単純なミスであることがほとんどです。
- 請求書を紛失していた
- 請求書を確認したが支払業務を忘れていた
- 請求書に書かれていた日付を勘違いして処理していた
- 請求書に不明点があり、担当に確認を依頼したが、担当が確認を忘れていた
連絡することで未入金が支払われれば一件落着です。メールで連絡するなら以下の例文を使ってみてください。
—–
株式会社〇〇
〇〇課 〇〇様
いつもお世話になっております。
××株式会社 ××課 ××です。
△月末日に△月分の請求書を(メール・郵送)にて送付させていただいておりますが、ご確認いただけましたでしょうか。
本日○時現在、弊社にてご入金の確認がとれておりませんでした。手違いかと存じますが、ご確認いただくようお願いいたします。
また、恐れ入りますが、ご確認が取れましたら状況を弊社にお知らせいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。行き違いでご入金済の場合は何卒ご容赦くださいませ。
××株式会社 ××課 ××
—–
メールで連絡する場合は、必要事項を修正してこのまま使ってみてください。電話の場合は、この文章を少し自分なりにかみ砕き失礼のないよう取引先へ伝えるのですが、良くない伝え方もあるので、次章で補足しておきます。
※電話連絡の伝え方
未入金を伝える目的は、売掛金を支払ってもらうことです。今後も取引が続く場合は気分を害さないようにすべきですし、仮に取引が終了するとしても、対応について噂が広がる可能性もあります。
言い回しの違いではありますが、売掛金回収後も取引先と良好な関係を維持するために、以下のOK・NGパターンに配慮しておくとよいでしょう。
- OK:入金の確認がとれておりません
- NG:入金がないです
- OK:請求書はお手元に届きましたでしょうか?
- NG:請求書は届いていますよね?
- OK:手違いかと存じますが、改めてご確認いただけますか?
- NG:入金が遅れている理由は何ですか?
- OK:恐れ入りますが、入金予定日を教えていただけますでしょうか?
- NG:入金日を教えてください
決めつけるような言い方や、責める言い回しは避けましょう。
3. 商品の出荷、サービスの提供を停止する
取引先に支払う意思がない、あるいは支払う意思はあるが現金がなく支払うことができないなど、未入金の連絡後も支払いの確認ができなければ、商品やサービスの提供をストップする必要があります。
今後代金が支払われる信頼性が低いことから、提供を続けても自社へのリスクが大きくなる一方です。
これ以上、未入金を発生させないための措置として取引先に「期日を過ぎても支払いいただいていない代金があるため、新たな出荷やサービスの提供は停止させていただきます。」というメッセージを伝えるなど毅然とした態度で臨みましょう。
4. 契約書の内容を確認する
未入金の連絡をしても支払いを確認できない場合、回収方法を考えるため、契約書など取引先が捺印し商品やサービスについて代金を支払うことが書かれた書類を確認します。
契約書なら捺印は当たり前にされているはずですが、もし契約書がない場合、取引先が対価として支払うことに合意した書類を確認するようにしてください。これらの書類は、最後まで支払いがなく裁判に発展した際に有益な証拠となります。
また、契約書の中に「期限の利益喪失条項」と「所有権移転時期」があるかもチェックしておきましょう。
1)期限の利益喪失条項
未入金の連絡をしても支払いを確認できない場合、回収方法を考えるため、契約書など取引先が捺印し商品やサービスについて代金を支払うことが書かれた書類を確認します。
契約書なら捺印は当たり前にされているはずですが、もし契約書がない場合、取引先が対価として支払うことに合意した書類を確認するようにしてください。これらの書類は、最後まで支払いがなく裁判に発展した際に有益な証拠となります。
また、契約書の中に「期限の利益喪失条項」と「所有権移転時期」があるかもチェックしておきましょう。
参考)成功する売掛金回収の方法は?未払金回収、売上回収でお困りの方必読
2)所有権移転時期
所有権移転時期は、商品の所有権が変わる時期を決める条項です。一般的には「引き渡し時」や「支払い時」など、引き渡したか支払いを済ませた時点かの2つに分かれます。
もし、契約書で所有権移転時期を支払い時としていた場合、支払いがない場合、商品の所有権は自社にあるため、支払いに応じない取引先に対して商品の返却を求めることが可能です。
参考)売買契約書で注意すべき所有権と危険負担の移転時期 | 福岡で企業法務に強い顧問弁護士に相談|たくみ法律事務所
5. 相殺できる債権を探す
商品の売買やお互いにサービスを提供しているなど、未入金のある取引先に対して売掛金と買掛金がある場合、未入金分の売掛金を買掛金で相殺することが可能です。
買掛金の金額が大きければ、未入金を全て相殺することができるかもしれませんし、金額が小さくても自社の損害を少しでも軽減することができます。
ただし、債権の相殺は、取引先が破産手続きなどの法的整理に入ると相殺期間が限定されるなど、認められなくなる可能性が浮上します。
したがって、相殺できる債権が見つかった場合は、できるだけ早く相殺する旨を「相殺通知書」として取引先に送付しましょう。
▼相殺通知書の例
相殺通知書では、それぞれの債権が以下のように表現されます。
- 受働債権:相殺される側が持っている債権(取引先が持つ自社が支払う予定だった買掛金)
- 自働債権:相殺する側が持っている債権(取引先から支払われる予定であった未入金)
自社が払う予定だったものが受働債権、受け取る予定だったものが自働債権を覚えておきましょう。また、「言った・言わない」「見た・見ていない」など、単純なトラブルに発展するのを避けるため、文書は内容証明郵便を利用して送り、相殺通知書の発送を第三者が証明できるようにしてください。
参考)相殺を利用した債権の回収方法 | さいたま・上野御徒町の法律相談なら弁護士法人 阿部・楢原法律事務所
なお、いずれかのステップでそもそも取引先が未入金を支払うつもりがないことが発覚した場合、法的措置を含めて本格的に債権の回収を行います。いわゆる、催促や督促と呼ばれる業務です。
法的措置を含めた未入金回収の手段と流れ
取引先に支払い意思がない場合や交渉ができない状況のときは法的措置を含めた以下の手順と回収していきます。
すでに催促メールや電話による未入金の連絡、支払いの依頼は済んでいると仮定し、それでも支払ってくれないときに催促状や督促状の送付、そして支払督促という法的手続きへと移行する流れです。
「催促状・督促状を送る」「支払督促という法的措置をとる」の2つに分けて流れを解説します。
1. 催促状・督促状を送る
取引先に連絡しても支払われない場合は、支払いをお願いする文書を送付します。催促と督促にはニュアンスの強さに違いがあります。
- 催促状:支払を催促する柔らかな意味合いを持つ文書
- 督促状:強く支払いを促し、支払われなければ法的手段へ移行するという意味合いを持つ文書
いきなり強いニュアンスを持つ督促状を送付してしまうと、取引先との関係性を悪化させてしまう可能性があります。そのため、催促状⇒督促状という流れで、徐々に支払わなければ状況は悪くなる一方であることを伝えるようにするのがいいでしょう。
ただし、催促状や督促状には法的に支払いを強制する拘束力はありません。メッセージ性の違いはあれど、あくまで支払いをお願いしている文書であることを覚えておいてください。
▼催促状の例
▼督促状の例
2. 支払督促という法的措置をとる
催促状や督促状を送付しても一向に支払われる気配がない場合、支払督促という法的措置へ移行し強制執行へ向けた手続きを行っていきます。
支払督促とは、裁判所が債務者に対して発行してくれる「代金を支払いなさい」という命令文です。裁判所が発行するということが重要で、法的拘束力を持つことから今まで支払いに応じなかった取引先も急に支払いを行うといった事例も珍しくありません。
支払督促を発行する流れは以下の通りです。
債権者(自社)が簡易裁判所に支払督促を申立るところから始まり、最終的には強制執行や裁判まで発展します。
支払督促の申立てで必要なのは、下記のような簡易的な書類のみです。
- 申立書(支払督促申立書)
- 請求の趣旨や原因(請求額や利息はいくらか、何によって発生した請求か)
- 当事者目録(債権者と債務者の特定)
そのため、弁護士などに依頼する必要もなく、短時間で簡単に申し立てることが可能です。
督促状や支払督促後の流れについては「図解でわかる督促!催促との違いから督促状の書き方まで解説」で詳しく解説しているのでご覧ください。
参考)支払督促とは?債権回収の場面での利用のメリットとデメリットを解説
そもそも未入金や売掛金の未回収リスクを発生させない方法は?
未入金の際の対応をマスターしておくことも重要ですが、さらに重要なのは未入金を発生させない体制づくりです。本章では未入金リスクを最大限まで減らす3つの方法を紹介します。
1. 売掛金管理の徹底
未入金となる原因で最も多いのは、以下のような経理担当のミスや営業担当との連携不足です。
- 請求書が発行されていない
- 請求書の内容が誤っている
- 正しい宛先に送付できていない
- 期日までに送付できていない
取引先が多ければ多いほど事務は煩雑になりますが、請求漏れや請求書の送付漏れなどに注意して取引先へ確実に請求しましょう。
また、未入金をすぐに気づく体制をとっていることも重要です。取引先への連絡が早いほど、担当の取引や請求書についての記憶が新しいうちに処理できるため、回収がスムーズになります。
経理担当者が少ない会社や少額の請求が多く、入金消込に時間がかかる企業ほど、体制構築について考える必要があります。入金消込にどうしても時間がかかる会社は「請求代行の利用(請求・決済業務の委託)」を検討してみてもよいでしょう。
入金消込の効率化については「入金消込とは?Excel管理の弱点と最も効率的な方法を徹底解説」をご覧ください。
2. 与信管理の実施
売掛債権は信用取引なので、取引先に支払能力があるかを確認する与信管理も重要です。取引先に支払い能力がないにも関わらず、大きな契約をして商品やサービスを提供してしまうと、未入金となり自社が被害を被る可能性も低くありません。
そのため、取引先の経営内容や財務状況を精査する与信管理を適切に行えば、未入金の発生を防ぐ効果が期待できます。
- 与信基準の設定
- 顧客の分析
- 営業との情報共有
- 定期的な与信枠の見直し
- 社内の承認プロセス確立
各プロセスの詳しい内容は「与信管理とは?未回収リスクを防ぐ効率的な運用や担当部署を解説」で紹介しています。
なお、与信管理に割く時間や基準を決めるノウハウがない企業は「請求代行の利用(請求・決済業務の委託)」を検討してみてもよいでしょう。
3. 請求代行の利用(請求・決済業務の委託)
最も未入金のリスクが少なくなるのは、請求代行を利用して決済や請求に関わる業務の大半を委託する方法です。請求代行「NP掛け払い」では、与信審査や請求書発行、代金回収業務などの業務を代行します。
売り手企業と買い手企業の間に入って業務を代行するため、売り手企業の業務は、請求データの提出とNP掛け払いからの入金確認のみになります。
さらに、未回収リスクも保証します。未入金や貸し倒れが発生したとしても、その売掛金の100%を『NP掛け払い』が負担します。
入金の確認や未入金の回収に割く時間を減らし、営業やマーケティングといった生産的な業務に注力する組織を目指しませんか?
まとめ
未入金は、本来回収することができる売掛金のうち支払われていない代金のことです。金額の大小に関わらず、自社のれっきとした利益なのでないがしろにするわけにはいきません。
ただし、ビジネスの世界では意図せずとも未入金が発生してしまうケースは珍しくないのが実情です。そのため、これを解決する手段や流れを知っておくことは、きっと今後のビジネスに役立つでしょう。
また、「NP掛け払い」を利用すれば、未入金リスクをゼロにすることが可能です。
売掛債権最大のリスクとなる未入金をなくして、自社のキャッシュフローや経営を安定させるためにも利用を検討してみてはいかがでしょうか。