請求書の未払いが生じた場合の催促に何からはじめたらよいかわからず困っていませんか。
そもそも催促とは、相手に早く支払いをするよう促すことです。送付した請求書の支払期限が過ぎているにも関わらず、相手からの入金がなく未払いとなっている場合には、支払いを催促する必要があります。
しかし催促の方法、メールや文章での伝え方を間違えると、取引先との関係が悪化する事態にもなりかねません。
そこで本記事では、請求書の未払いに対する対応の手順から未払いを防ぐための対策まで、初心者でも無理なく催促できる方法を専門家がわかりやすく解説します。
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請求書の未払いが発生した時の催促方法
まず「請求書の未払いが発生した時にどのような方法で催促するか」ですが、催促の「段階」によって異なります。
最初に行う催促は、取引先への確認の意味も兼ねて通常の連絡手段に合わせるのがよいでしょう。
例えば、メールで請求書を送付している場合や商品の受注をメールで受けている場合など、普段の連絡手段がメールの場合、最初の連絡はメールで行います。
FAXや文書での送付が主な連絡手段である取引先については、文書を送付します。
経理の担当者、もしくは営業の担当者とすぐに電話ができる関係で、電話での対応が可能な場合には口頭で確認します。このとき、口頭で話した内容は必ずメモに残しましょう。万が一、裁判になった場合に、証拠として認めてもらえる可能性があるためです。
請求書の催促の方法を5つのステップで解説
取引先に請求書の未払いがある事実を伝えたにも関わらず、すぐに支払ってくれない場合には、書面で催促します。
書面での催促状の書き方を含め、催促の具体的な対応手順を詳しく解説します。
ステップ1. 自社に落ち度がないかどうかを改めて確認する
支払期日に取引先から入金が無かった場合、自社に何らかの落ち度がある可能性があります。自社のミスとしては、以下のようなことが考えられます。
- 請求内容が間違っていた
- 請求書を発送するのを忘れていた
- 請求方法が間違っていた
- 請求先の住所が間違っていた
催促の対象となる請求書の控えを確認し、請求明細、支払期日に間違いがないかどうかを再度確認しましょう。
メールで請求書を送付することになっていたのに誤って文書で送付してしまった場合には、取引先が文書で請求書が届いていることに気が付いていない可能性があります。
取引先によっては、請求書の支払い業務は子会社に委託している場合もあります。取引に関する契約書があれば支払いについても書いてあるため、再度確認しましょう。
ステップ2. 確認できたら催促を行う
自社にミスが無いことを確認できたら、次に取引先へ請求書が届いているかどうかの確認をします。
最初の催促は「取引先への確認」です。もしかすると郵便事情で請求書が届かなかった可能性があります。
他には、サーバーの不具合が生じていて請求書を添付したメールを受け取ることができていなかったなどの理由も考えられるでしょう。また、取引先が単純に振込を忘れていたという可能性もあります。
上記を踏まえ、取引先へ確認することは以下の2つです。
- 請求書が届いているかどうか
- 支払予定はいつになるか
取引先に連絡をする際は、高圧的な態度にならないよう気を付けましょう。
反応がない場合の対処法
請求書が届いていることは確認できたのに支払ってくれない、そもそもメールの返信が来ない、電話に出てくれない場合には文書で催促状を送ります。
普段の連絡手段がメールや電話の場合、文書を送る段階でも再度メールや電話で念押しをすることも有効です。伝える内容は、以下の通りです。
- まだ支払いの確認が出来ていない
- 念のため、郵送でも請求書の送付をお願いしたい旨を文書で伝える
文書が届いた時すでに支払い済みとなっていた場合には文書を破棄してもらうことも、あわせて伝えてください。
文書での催促状を送っても支払いがない場合、再度催促状を送るか、もしくは督促状の送付に移行するかどうかを検討します。
ステップ3. 支払いがなければ督促を行う
催促と督促の違いは、相手への強制力の強さです。催促状はあくまでも「支払いのお願い」という意味合いが強くなりますが、督促状は催促状と比べて、より強い強制力を持ちます。
督促状では、以下の内容を伝えます。
- 未払いとなっている請求内容
- 金額
- 当初の支払い期限
- 新たな支払い期限
- 振込先
督促は文書で行います。督促状は、拝啓から始まる挨拶文を省略し、前略を使うなど催促状より緊急性の高いことを表す文面にします。
それでも支払いがない場合には再度督促状を送り、今後継続的な取引ができなくなる可能性や、法的手続きも辞さないこともあわせて伝えます。
今後の取引継続や、法的手続きの可能性については、最初の督促から伝えることも可能です。取引先との関係や状況に応じて判断してください。
文書を送る方法ですが、普通郵便よりは速達、もしくは特定記録付きの速達で送ることをおすすめします。特定記録は郵便に追跡番号を付けることができる郵便局のサービスです。
緊急性が高いことのメッセージとして相手への心理的効果を高めることができます。
ステップ4. 催告書を作る
何度も催促をし督促状も送ったのに入金がない場合には、法的手続きに入る前提として催告書を内容証明郵便で送ります。催告書は督促状よりさらに強い文面です。
なぜ内容証明郵便で送付するかというと、郵便局が文書の内容を証明してくれるため、裁判になったときに証拠として提出できるためです。
さらに裁判時の証拠力を高めたい場合には配達証明付きの内容証明郵便にします。配達証明は相手が書面を受け取ったことを証明する機能があるため、相手は受け取っていないと言い逃れをすることができなくなります。
また、一般債権の消滅時効は5年ですが、時効が迫っている場合には内容証明郵便で催告書を送ることにより6ヶ月の時効中断効果があります。ただし6ヶ月以内に裁判手続きに入ることが条件です。
催告書の書き方について簡単に解説します。
1. 内容証明郵便の形式に合わせて文書を作成する
まず、郵便局で規定されている内容証明郵便用の文書の形式は以下の通りです。
<横書きの場合>
- 1行20字以内、1枚26行以内
- 1行13字以内、1枚40行以内
- 1行26字以内、1枚20行以内
このいずれかの様式に合わせてパソコンで文書を作成します。手書きの場合は、専用用紙を購入して書きます。
2. 催告書に記載する内容
催告書には、以下の内容を記載します。
<記載する内容>
- 請求先の情報(本店・社名・代表者)
- 作成年月日
- 対象となる債権の内容(原因・請求金額・支払い期日)
- 未払いとなっている事実
- 本文書での請求内容(例:7日以内にお支払いください)
- 支払いがなければ法的手続きをとる旨
- 差出人の情報(本店・社名・代表者・印)
表題は「催告書」としましょう。
3. 催告書を書くポイント
内容証明郵便で送る文書の内容はできるだけ簡潔に記載します。あいまいな表現は避け、明確に伝わる文章を書きましょう。
また、文書を作成する前に再度事実関係を確認します。間違ったことが書いてあると裁判になったときに問題となる可能性があります。この時、相手が確実に振り込めるよう振込先を記載することは問題ありません。
4. 郵便局で送付の手続きをする
規定通りの文書が完成したら、同じ書面を3枚用意します。
- 送付用
- 郵便局保管用
- 差出人保管用
送付用の封筒も準備しますが、封はしないで持参してください。この時、文書以外のものは同封できないことにも注意しましょう。
集配郵便局もしくは内容証明郵便が送付可能な指定郵便局に行き、配達証明付き内容証明で送ります。郵便局によっては内容証明郵便の取り扱いがない場合もあるため、事前に確認してから行くことをおすすめします。
郵便局のサービスとしてインターネット上に書面をアップロードすることで24時間内容証明郵便の手続きが可能なe内容証明(電子内容証明)もあるので、お近くに郵便局が無い方、文書をできるだけ外に持ち出したくない方は利用を検討してみるのも一つでしょう。
e内容証明についての具体的な詳細は郵便局の公式Webサイトをご覧ください。
ステップ5. それでも未払いであれば裁判手続きに進む
催告書を送っても相手が支払ってくれない場合には、法的手続きへと入ることになります。
法的手続きというと、一般的な訴訟をイメージするかもしれませんが、訴訟の他にも解決をはかる手段があります。
少額訴訟
少額訴訟は原則1回の審理で判決を言い渡すことを原則とする特別な手続きです。60万円以下の金銭の支払いを求める場合に限り利用することができます。
支払猶予、分割払いとする判決や、和解による解決が可能です。ただし、被告が少額訴訟手続きに同意する必要があります。
支払督促
支払督促は債権者が提出した申立書の審査のみで裁判所書記官が金銭の支払いを命じることができる制度です。確定すると、判決と同様の効力が生じます。
早期解決を図ることができますが、債務者から異議申し立てが出た場合には通常訴訟に移行します。
支払督促については「【悩む債権者必見】支払督促とは?流れや費用・秘訣を専門家が解説」をご覧ください。
民事調停
民事調停は、裁判所の調停委員会のあっせんにより、紛争を話合いで解決しようという制度です。簡易裁判所に申し立てることができます。
調停でまとまった内容は、判決と同様の効力があります。相手との間に話し合いによる解決の余地がある場合には利用することを検討できます。
通常訴訟
通常訴訟は、裁判官が法定で双方の言い分を聞き、証拠調べをし、最終的に判決によって紛争の解決を図る手段です。勝訴判決が得られれば強制執行をして債権を回収することができます。
申し立てから判決まで最低でも半年はかかるといわれています。
催促しても支払われない場合の2つの対処法
催促しても取引先が支払ってくれない場合、一方的に文書を送付するだけではなく、相手の事情を考慮して対応することも必要です。
催促中ではあるものの、気付かない間に取引先が倒産していた…ということにもなりかねません。また、催促された請求書の金額を支払う意思はあるが、トラブルが生じて一時的に支払えないという可能性もあるでしょう。
取引先から支払いについて相談があったら、社内で検討し、対策を考えましょう。
1. 支払期日を延期する
取引先から支払遅延のお願いについての文書が送付された場合には、その内容が妥当かどうか検討します。
取引先が指定した支払期日まで待つことができる場合、その旨を記載した支払遅延承諾書を相手に送ってください。
もし待つことができなければ、一部だけ先に支払ってもらい、残金を相手の希望する支払期日まで待つというような提案をするのも一つの手段です。
2. 分割払いで支払ってもらう
取引先から一度に全額を支払えないと相談された場合には、分割払いによる支払いを検討します。支払いを確実にするため、今回に限り遅延損害金は課さないとすることで相手が支払いやすくなる可能性があります。
ただし今後再度支払いが遅れた場合には遅延損害金も請求するなどペナルティがあることを警告する必要があります。
支払方法で合意ができたら、契約書や覚書で必ず書面に残しましょう。
3つのポイントを抑えた催促状の書き方と例文
取引先へ支払いを促す書面として最初に送るのが催促状です。そこで本章では、催促状の書き方と例文をより詳しくご紹介します。
催促状を書くポイント1. 宛先と差出人
宛先は取引先の代表取締役宛、もしくは担当の部署とします。窓付き封筒に入れて送る場合には宛先の住所も記入しますが、一般的な封筒で送付する場合は宛先の住所は記載しなくてもよいでしょう。
差出人は自社の代表取締役、あるいは担当部署です。差出人の方は、住所や連絡先を記載しても構いません。書類を確認した取引先が連絡をしてくる可能性があるため、むしろ連絡先は記載しておいた方が無難です。
催促状を書くポイント2. 内容
どの請求が未払いとなっているのか、日付や商品内容を記載して明確にわかるようにします。また、取引先が該当する請求書を確認しなくてもすぐに代金を支払えるよう、金額と振込先を記載します。
請求書のコピーを1部用意し、それが写しとわかるようにして同封することも有効です。この場合は、請求書の写しを同封することを書面にも記載しましょう。
催促状を書くポイント3. 結びの言葉
催促状は全体的に角が立たないよう丁寧に書きます。すぐに訴える、ことを示唆するような内容をいれ相手を困惑させるような文章は避けてください。
結びの言葉として、行き違いに入金があった場合のお詫びの言葉を記載しましょう。1枚の書面で、要点を明確にしてわかりやすく書くことが大切です。
上記3つのポイントをおさえた上で記載した催促状の例文は、以下の通りです。
請求書の未払いが起きてしまう原因
ここまで請求書の未払いによる催促の流れについてお伝えしてきました。一度請求書の未払いが生じると解決のための時間を取られてしまうことはもちろん、心理的な負担も増加します。
だからこそ、はじめから請求書の未払いが生じないようにすることが重要です。今後請求書の未払いが生じないようにするためにも、なぜ未払いが起きてしまうのか、その原因をまとめました。
ケース1. 自社の落ち度だった
請求書の未払いが生じたため原因を探したところ、実は自社のミスだったということがあります。自社の落ち度として考えられる原因は、以下の通りです。
- 請求書の送付先
- 請求内容
- 振込先
- 支払い期限
請求書に不備があれば入金が遅れることはもちろん、そもそも取引先の担当部署まで届いていなかったという可能性も出てきてしまいます。
ケース2. 取引先の落ち度だった
自社から送付した請求書に問題がないにも関わらず、請求書の未払いが生じている場合は、相手のミスによる遅延の可能性があります。理由としては、以下の通りです。
- 請求書が届いていることに気付かなかった
- 入金するのを忘れていた
- 支払期限を勘違いしていた
- 誤った振込先に振り込んでしまった
取引先自体には支払遅延のつもりがなくても、担当者のミスによって未払いが生じてしまう可能性があります。
ケース3. そもそも取引先に支払意思がなかった
そもそも取引先に支払う意思がなかったため、請求書の未払いが生じてしまうことも原因の一つです。
取引した相手が代金を踏み倒すつもりで商品やサービスを購入する悪質なクライアントだった場合、どんなに請求書の未払いを催促しても支払ってくれることは無いでしょう。
また、実は取引先が倒産間近で取引当時すでに支払能力が無かったというケースも考えられます。
請求書の未払いを起こさないために考えたい3つのこと
請求書の未払いに対する催促を無くすためには、請求書の未払いが起こらない環境を整えることが重要です。
請求書の未払いはいつ発生するか予測できず、一度請求書の未払いが発生すると本来の業務にも支障が出てしまうほどの大きな負担が生じます。
しかし、請求書の未払いが起こらない環境を整えることは今すぐできます。そこで、これからできる対策をご紹介します。
1. 現状の業務の流れを見直す
まずは軽微なミスや情報の行き違いを防ぐため、現状の業務フローを見直しましょう。具体的には、以下のような対策が効果的です。
- 請求書の送付ルールを明確にする
- チェック体制の再構築
- 進捗状況を関連部署で共有する
社内でのダブルチェック、トリプルチェックは当然ですが、その機能が活かせているか検証することも必要です。チェックリストを導入するなど目視のみの確認で終わらせないよう対策を立てることも有効です。
また、ミスが生じたときにすぐに気付いて対処できるよう環境を整えることが重要です。ミスを防ぐためにはチェック体制の再構築、社員同士の意思疎通を高めるなどの対策が考えられます。
2. 与信管理を怠らない
取引をするかどうかを決める重要な要素が与信管理です。
与信管理とは、取引先に支払い能力があるかどうか、経営状態に問題はないか、今後継続して取引が可能かどうかを調査し判断することです。
賃貸マンションのオーナーが契約前に入居者の情報を審査するのと同じように、企業も取引先の内容を調査して取引するかどうかの判断をする必要があります。
最初の取引の時点で与信審査をすることはもちろん、取引が継続する場合には取引継続中も与信管理を怠らないことが求められます。
3. 必要に応じて専門家を入れる
請求書の未払いを防ぐために様々な対策を施しても、未払いが生じる可能性があります。未払いが生じたら再度催促をしなければなりません。
催促が度重なるようであれば司法書士や弁護士といった専門家も交えて対処することをおすすめします。
専門家に対処を依頼すると費用は掛かりますが、裁判沙汰は避けたいと思っている取引先ならすぐに支払ってくれる可能性があります。
また、事前に取引の内容自体に自社の落ち度がないか、契約書面に問題がないか、専門家にチェックしてもらうことも有効です。
それでも催促が減らなかったら「NP掛け払い」の利用がおすすめ
請求書の発送業務はミスができないため神経質にならざるを得ない業務です。また、日々の入金確認も手間のかかる作業です。普段の業務だけで忙しいのに請求書の未払いの催促まで追加されてしまったら担当者の負担は相当なものとなります。
しかし人材を増やすことも簡単にはできません。実は催促をしなくても請求金額を確保できる方法があります。「NP掛け払い」を利用することです。
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NP掛け払いの最大のメリットは、未回収リスクを保証してくれることです。万が一、未払いが生じても、売掛金の全額を「NP掛け払い」が負担するため、請求通りの入金を確保することができます。そのため、人材の少ない会社でも安全に決済が可能です。
請求書の未払いによる催促が減らない場合、「NP掛け払い」を検討しましょう。
まとめ
請求書の未払いが生じた場合、取引先にスムーズに支払ってもらうためには段階に応じた適切な催促が必要です。
<請求書の未払いが生じた場合の一般的な流れ>
- 自社にミスがないかの確認
- 取引先への催促
- 催促しても入金がなければ督促状の送付
- 法的手続きを見据えた催告書の送付
- 法的手続き
催促には時間と心理的負担がかかりますが、放っておくことはできません。「後からしよう」と引き延ばしているとますます回収が困難になります。請求書の未払いが生じたら迅速に対応することを心掛けてください。
また、担当者が一人で抱え込むことがないようにすることも大切です。必ず社内、もしくは部署内で情報を共有し、進捗を可視化しておきましょう。催促がうまくいかないからといって担当者が責められる必要はありません。
チームで協力して支払いを催促して、未払金をしっかり回収しましょう。
著者:森川美琴(司法書士)