【悩む債権者必見】支払督促とは?流れや費用・秘訣を専門家が解説

商品を販売したのに代金を全く支払ってもらえない相手には、裁判手続きを検討せざるを得ません。

一言で裁判手続き、というと難しそうなイメージがあります。なんとなく躊躇してしまう方もいるでしょう。しかし未払いの債権を回収するということは債権者にとって当然の権利です。

支払督促は裁判手続きのひとつですが、自分でもできる比較的容易な手続きです。

本記事では、はじめて支払督促を申立てる方でもスムーズに内容が理解できるよう、支払督促の特徴から手続き方法までわかりやすく解説していきます。

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支払督促とは、債権者が債務者に金銭の支払(返還)を要求すること

支払督促とは、債権者の申立てに基づいて、裁判所が債務者に対して金銭の支払いを命じる手続のことです。

通常の訴訟は、当事者双方による口頭弁論や証拠調べを行い、判決をもって強制執行をします。訴訟になると、場合によっては判決が出るまでに何年もかかります。

これに対し支払督促は、早ければ1ヵ月~2ヵ月で手続が終わり、債務名義を得ることができます。債務名義とは、強制執行ができることを証明する文書のことです。

つまり支払督促を利用すると、債権者からの申立てのみで短期間で強制執行が可能になるため、早期の問題解決に繋がります。

支払督促は通常の訴訟手続きに比べて費用も安く済むため、債権者にとっては利用しやすい裁判手続きと言えるでしょう。

しかし実際に申立てをする場合には、注意しなければならない点もあります。具体的な注意点について、次章より詳しく説明していきます。また、債務名義は本文の中でも何度か登場するため、この段階で言葉の意味をしっかりと覚えておきましょう。

支払督促はどのような人が対象になる?

まず、支払督促の要件についてみていきましょう。支払督促を申立てられる請求には「要件」があります。要件に当てはまらないと、支払督促は利用できません。

要件は以下の通りです。

  • 請求が金銭その他の代替物又は有価証券の一定数量の給付を目的とすること
  • 日本国内で公示送達によらないで送達のできる場合であること

お話をまとめると、金銭債権を持っていて、かつ支払督促の送達先である相手の住所や居所を把握している人(会社)が支払督促を申立てることのできる対象となります。

金銭債権を持っている人

一つ目の要件は、請求の種類です。つまり、金銭を目的とした債権が対象となります。未入金になっている売買代金の請求や、貸金の返還など主に金銭債権について支払督促を利用することができます。

建物の明渡請求や所有権移転登記請求など金銭債権以外の債権について申立てることができません。

これは支払督促が相手側の主張を聞かず、債権者の申立てのみで発せられる簡易な手続のためです。

支払督促の送達先である相手の住所や居所を把握している人

次に、支払督促が送達される相手の住所を把握している人が対象となります。

支払督促は、裁判所から法定の方式に従い相手に送付されます。このことを送達といいます。送達には種類がありますが、支払督促の場合、所在不明の相手への送達手段である公示送達を使うことができません。

つまり、日本国内で相手の所在がわかる場合にのみ支払督促ができるということになります。

所在不明の相手へは支払督促を申立てることができません。その理由は、支払督促を受けた相手には異議申立てをする権利があるので、その機会を失わせないようにするためです。

図解で解説する、支払督促を行うための5つのステップ

では、実際に支払督促の申立てはどのようにするのでしょうか。申立書の書き方から、債務名義(強制執行できる権利)を得るまでの流れを5つのステップにまとめました。

参照:裁判所ホームページ

ステップ1.支払督促申立書に必要事項を記入する

支払督促をするためにはまず申立てが必要です。支払督促の申立ては、書面もしくはオンラインで行います。本章では、裁判所に掲載されているひな形を利用し、書面での申立書の書き方について詳しく説明します。

申立書の書式は、「支払督促申立書(裁判所)」からダウンロードができます。

現在裁判所のホームページからダウンロードできる書式は、どの種類の請求にも対応できる汎用タイプのため、3枚目の「請求の原因」という項目の書き方がはじめての方ではわかりにくいかと思われます。

簡易裁判所では、請求の種類に応じた申立書の様式を用意しています。書き方が難しそう、と思ったら簡易裁判所で申立書をもらって記入することをおすすめします。簡易裁判所では、その場で記入方法を聞くことも可能です。

<申立書見本>

参照:裁判所ホームページ

申立書の一枚目に記載する内容は、以下のとおりです。

①事件名

事件名は「〇〇」請求事件とします。売買代金を請求する場合は「売買代金」と記入します。

②当事者の表示 

別紙(2枚目)の当事者目録に詳しい内容を記載するので、申立書に追加で記載する文面はありません。

③請求の趣旨及び原因

こちらも別紙(3枚目)の請求の趣旨及び原因に詳しい内容を記載するので、申立書に追加で記載する文面はありません。

④債務者に求める内容

「債務者(ら)は、(連帯して)債権者に対し、請求の趣旨記載の金額を支払え」と記載してあります。債務者が複数の場合には、カッコ内の言葉を追記します。

⑤申立手続費用

申立手続費用は合計額とその内訳を記載します。

⑥日付

申立書を提出する日を記入します。

⑦債権者の住所・氏名・連絡先

債権者の住所及び氏名、連絡先を記載し、押印します。法人の場合は、商業登記上の住所を登記のとおりに記載してください。会社の代表者を書く時は以下のように記載します。

「代表者代表取締役〇〇〇〇」

代表取締役の前に「代表者」が入るので気を付けましょう。

⑧申立裁判所

相手の住所地の管轄の簡易裁判所名を記載します。支払督促は相手の住所地を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官に対して行います。

⑨価額

請求する金額の元本を記入します。

⑩貼用印紙

申立手数料相当額の印紙代を記入します。

⑪郵便切手

1,099円×債務者数、84円切手一枚分の合計額を記入します。ただし、書類の枚数や管轄の簡易裁判所によって金額が違うケースがあるので管轄の簡易裁判所に直接確認した方が良いです。(東京都の場合は、1,125円×債務者数と120円切手一枚となります)

⑫葉書

葉書は支払督促が相手に送達された結果の通知を受け取るためのものです。債務者が1人の場合は、一枚と記入します。

⑬添付書類

債務者が法人であれば資格証明書が必要になるので、資格証明書の欄にチェックを入れます。

<当事者目録>

参照:裁判所ホームページ

①債権者の内容

債権者の欄には申立人の住所・氏名・連絡先を正確に書きます。住所は都道府県名から書きます。一枚目の申立書と同様、法人の場合は商業登記上の住所を正確に書くことを要します。また、代表者は一枚目と同様、「代表者代表取締役〇〇〇〇」のように記載します。

②債権者の送達場所等の届出

債権者に対する書類の送達先が、当事者目録に記載した債権者の住所で問題なければ「上記の債権者住所」にチェックを入れます。

③債務者の内容

債務者の欄には債務者の住所・氏名・連絡先を書きます。実際に郵便物が届く現住所を記入します。債務者が法人の場合は住所、会社名のほか、代表者名を必ず書いてください。

債務者の電話番号とFAX番号がわからない場合は空白のままでも大丈夫です。

<請求の趣旨及び原因>

参照:東京簡易裁判所ホームページを元に作成

ここでは東京簡易裁判所の書式を使って、一回の売買での支払遅延のための請求の趣旨及び原因についてポイント解説します。

①請求の金額 

請求する金額を書きます。

②遅延損害金 

遅延損害金を請求する場合にチェックを入れます。遅延損害金の利率は、当事者間で約定利率を定めていなかった場合には法定利率となります。法定利率は現在は3%です。(3年ごとの変動制)

③申立手続費用

申立手続費用は、一枚目の申立書に記載した申立手続費用と同じ額を書きます。

④契約の内容

請求の趣旨に書いた金額が、どのような原因に基づいて発生したものなのかを書きます。

⑤請求金額の内容

実際の内容に合わせて記入します。

⑥最終支払期限

実際の内容に合わせて記入します。

ステップ2.申立書を相手の住所地(所在地)を管轄する簡易裁判所に提出する

支払督促の申立ては、請求の金額にかかわらず、債務者の住所の所在地を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官に対して行います。

申立ての際には以下のものを提出します。

  • 申立書
  • 収入印紙
  • 郵便切手
  • 封筒
  • 郵便はがき
  • 「当事者の表示」「請求の趣旨及び原因」の各コピー(※押印していないもの)
  • 当事者が法人の場合は代表者の資格証明書もしくは登記事項証明書

申立書は、必ずコピーをとり控えを作ります。封筒は、債権者の宛名と債務者の宛名を書いたものをそれぞれ用意します。

「当事者の表示」「請求の趣旨及び原因」の各コピーは債務者数+1の枚数が必要となります。代表者の資格証明書もしくは登記事項証明書は、法務局で取得することができます。

<提出する際のポイント>
債務者の住所の所在地を管轄する簡易裁判所が遠い場合は上記一式を郵送します。
収入印紙と郵便切手は、念のため直接貼らずに申立書にクリップで留めたり小さな袋に入れておいた方がよいでしょう。ただし簡易裁判所から直接貼付するよう指示があった場合はそちらの指示を優先してください。

ステップ3.裁判所が相手方に支払督促を送る

簡易裁判所の書記官は、支払督促の申立書を受取ると内容に不備がないか審査し、支払督促を発付するかどうか判断します。

申立書の記載にミスがないか、手数料の金額が合っているか、請求の内容に金銭債権以外が含まれていないかなどを確認します。

簡易裁判所の書記官が問題ないと判断すると支払督促が発付されます。支払督促を送達する封筒には、異議申立書が同封されます。相手方は送達を受けた日から2週間以内に異議申立書を提出して異議を申立てることができます。

ステップ4.仮執行宣言の申立てを行う

支払督促を受け取った時点で相手方が弁済をしてくれたら、これで解決です。しかし、相手方が弁済もせず、異議申立てもせずに2週間を経過した場合には、仮執行宣言の申立てという2度目の申立てを行います。

仮執行宣言の申立ては、相手方の異議申立て期間が経過してから30日以内に行う必要があります。30日を過ぎてしまいますと、支払督促は効力を失うので注意しましょう。

申立ては支払督促の時と同じ、債務者の住所を管轄する簡易裁判所の書記官に対して行います。
仮執行宣言の申立書は、「仮執行宣言申立書(裁判所)」にひな形があります。仮執行宣言の申立てでは以下のものを提出します。

  • 仮執行宣言申立書
  • 受領書
  • 郵便切手
  • 封筒
  • 郵便はがき
  • 支払督促申立書に使用した「当事者の表示」「請求の趣旨及び原因」のコピー(押印のしていないもの)

ステップ5.仮執行宣言付き支払督促の送達を行う

簡易裁判所の書記官は仮執行宣言の申立てがあると、仮執行宣言をします。債務者には仮執行宣言が付与された支払督促が送達されます。

相手方は、仮執行宣言付き支払督促の送達を受けた場合でも、2週間以内であれば督促異議の申立てをすることができます。

もし期間内に異議の申立てがない場合、もしくは異議の申立てが却下された場合には、支払督促は確定判決と同一の効力を有することになります。

なお、仮執行宣言付き支払督促が相手方に送達されると、債権者は相手方に対してただちに強制執行の手続きをとることができるようになります。相手は異議申立期間内は異議を申立てることができますが、強制執行を停止させる効力はありません。

強制執行の手続きは、支払督促とは別の手続になりますので別途申立てと申立費用の納付が必要です。

支払督促をする3つのメリット

ここまで、支払督促の申立ての流れを説明してきました。裁判手続きには法律の専門用語がたくさん出てくるので難しそうに感じた方もいるかもしれません。

しかし、請求に争いがなければ支払督促の申立てが早期解決に有効です。それは、支払督促には、以下のようなメリットがあるからです。

シンプルな手続きのため短期間で済む

支払督促は、債権者の申立てのみによって発せられる簡易な手続です。相手方を呼び出して主張を聞いたり証拠調べをすることはしません。そのため、短時間で債権の回収を見込むことができます。また、書面でもオンラインでも申立てが可能です。

強制執行の申し立てができる

相手がどうしても支払ってくれない場合、強制執行をして債権を回収することが考えられます。支払督促は、争いのない事案に対して迅速に債務名義を得させることを趣旨としているため、通常訴訟で判決をとらなくても強制執行をすることができます。

支払督促に仮執行宣言が付されれば、それが債務名義となり、強制執行の申立てができるようになります。

消滅時効の期間経過をリセットさせることができる

債権の消滅時効は、以下のとおり定められています。

  • 権利を行使することができることを知った時から5年
  • 権利を行使することができる時から10年

通常、債権者は支払期日をわかっているので、消滅時効は5年と考えられます。

もし、時効期間を経過してから債権の請求をしたとしても、相手から時効を主張されると債権の回収はできません。そのため、債権者としては時効が完成しないようにしなければなりません。

支払督促の申立てをした場合、申立てによって時効の完成を猶予され、支払督促の確定により時効が更新されます。つまり、仮執行宣言付き支払督促が確定したら時効はリセットされ新たに進行することになります。

ただし期限内に仮執行宣言付き支払督促を申立てなかった場合、また支払督促の申立てを取り下げたときには時効完成阻止の効果はなくなりますので注意が必要です。

支払督促をするデメリット

では、支払督促をする上でのデメリットはあるのでしょうか。

支払督促の一番のデメリットは、相手方が異議を出した場合に通常訴訟へ移行するという点です。

相手方から適法な異議申立てがなされると、支払督促の申立てをしたときにさかのぼって訴訟を提起したものとみなされ、追加の申立手数料の納付を命じられます。

通常訴訟に移行した場合、管轄は相手方の住所地になるため、相手方が遠方の場合には遠方まで出向かなければなりません。それに通常訴訟に移行すると、解決までに時間もかかり、提出する書類も増えるため自分で対応するのは難しくなってしまいます。

審理の結果によっては最悪の場合、債権を回収できないばかりか、訴訟費用がかさんで費用倒れになってしまう可能性があります。

支払督促は専門家に頼むべきなのか?

裁判手続きを自分でやるのは不安なので専門家に任せた方が良いのでは、と思う方もいるでしょう。確かに通常訴訟ともなると準備する内容が複雑になるので弁護士に依頼するのが一般的です。

ただし、例えば弁護士に依頼した場合、着手金と成功報酬(15〜20%)を支払う必要があります。そうなることで、相手から全額回収できたとしても、そこから弁護士費用が差し引かれることになります。

支払督促申立てに必要な申立書は、先ほどご紹介したとおり基本的には3枚です。記載する内容は請求の種類によって決まっており、定型の用紙に記載してある項目に沿って必要事項を書いていくだけで完成します。まずは自分でやってみて、難しそうだと感じたら専門家に依頼するというのも一つの手です。

支払督促は相手方との争いがないケースを前提としています。相手方が異議を申立てて訴訟に移行する可能性が高い場合には、訴訟に移行した段階で弁護士に頼むよりも、支払督促の申立て時点で依頼した方がスムーズな場合もあるかもしれません。

専門家に頼むべきかどうかは、契約の内容や相手との関係などケースによって検討することをおすすめします。

支払督促にかかる費用は?

支払い督促にかかる費用は申立手数料、郵便切手代などです。支払督促の場合、申立手数料は通常訴訟の手数料額の半額と定められています。請求の金額によって必要な申立手数料の額が異なります。

申立手数料は印紙で納めます。

<申立手数料の例>

請求の目的の価額手数料の額
10万円まで500円
50万円2,500円
100万円5,000円
200万円7,500円
500万円15,000円

申立手数料の算定方法は裁判手続きの種類ごとに決まっていますが、手数料早見表があるので、申立手数料の確認は「手数料額早見表(裁判所)」が便利です。 

その他の費用は以下のとおりです。ただし、郵便切手代は書類の枚数や各簡易裁判所によって扱いが違う可能性がありますので必ず管轄の簡易裁判所に費用の確認をしましょう。

  • 郵便切手代 1,099円(債務者一人につき)+84円
  • 資格証明書代(当事者が法人のとき) 600円
  • 郵便はがき代 63円(債務者一人につき)

売買代金50万円の債権について、支払督促の申立てをする場合の費用例を見てみましょう。当事者は債権者、債務者とも法人で、債務者は一社を前提とします。

項目金額
申立手数料2,500円
郵便切手(1,099円+84円)1,183円
郵便はがき63円
資格証明書(当事者各1通)1,200円
合計4,946円

なお、申立書作成費用として800円分、郵便切手代などの支払った実費は相手への請求額に含めることができます。

請求の金額にもよりますが、弁護士などの専門家に依頼しなければ、1万円もかからずに支払督促の申立てをすることができます。

申立て準備を自分で行うための方法

もし自分で支払督促の申立てをする場合、まず何から準備すればよいのでしょうか。

最初にしなければならないことは、請求に間違いがないかどうかを再度確認することです。相手の条件通りの納品ができているか、請求金額に間違いがないかなど、こちら側に落ち度がないかを確認します。複数回の取引がある場合は、請求する内容をまとめておきましょう。

次に、催告書を送っていない場合には内容証明郵便で催告書を送って法的手続きに入ることを伝えます。もしかしたらこの段階で支払をしてくれるかもしれません。また、強制執行するときに備えて相手の債権や財産を事前に把握しておきましょう。商品を卸している取引先、取引銀行の取引支店などを確認します。

いよいよ支払督促の申立てをする段階になったら、管轄の簡易裁判所に相談をします。電話、もしくは実際に管轄の簡易裁判所まで行って相談しましょう。簡易裁判所では、請求の種類に応じた申立書のひな形をもらうことができます。郵便切手の額や、封筒のサイズなども管轄の簡易裁判所によって違う可能性がありますので、用意するものについても直接確認しましょう。  

なお、オンラインで申立てる場合には、電子証明書が必要になります。法人の場合は法務省の商業登記電子認証ソフトで取得手続きができます。個人の場合、マイナンバーカードに搭載された電子証明書を使うことができます。

支払督促と少額訴訟ではどちらが良いか?

支払督促と同様、簡易な手続で強制執行ができる裁判手続として少額訴訟があります。

少額訴訟は、原則一回の証拠調べでその場で判決をする手続です。請求の金額が60万以下、利用できるのは年に10回までと決まっています。

そのため、請求の金額が60万円を超えている場合は少額訴訟を使えません。

少額訴訟の場合は、1回だけですが口頭弁論期日があるので、期日までに証人や証拠の準備が必要になります。審理の結果次第では、分割払いや支払猶予の判決となることがあります。相手方が少額訴訟手続きによる審理に同意しない場合には、通常訴訟に移行します。

支払督促と少額訴訟を比べると、争いがなく異議が出ないと見込まれる請求であれば支払督促の方がより簡易に解決できる可能性があります。

実際には以下のように、少額訴訟に比べて支払督促の方が多く利用されています。

引用:政府広報オンライン

支払督促をする際に注意しておくべきポイント

支払督促は自分でもできる簡易な裁判手続ですが、ルールを守らないと申立てが却下され、無駄足になってしまう可能性があります。

そこで支払督促を申立てて、スムーズに強制執行まで進むためにも特に注意しておきたいポイントをまとめました。

申立書は正確に書く 

申立書に間違いがあると補正を求められる可能性があります。

全ての項目において正確に書いてください。ただし、軽微な訂正であれば捨印で対応できる場合がありますので、捨印は全ページに必ず押印しておきましょう。

不送達になった場合は再送達をしてもらう

支払督促が送達されても転居先不明・宛てどころ尋ねあたらないという理由で不送達になる可能性があります。

この場合、新住所の申出をして再送達してもらうことができます。ただし2ヵ月以内に新住所の申出がなかった場合、支払督促の申立てを取り下げたものとみなされますので注意が必要です。

仮執行宣言付支払督促の申立期限に気を付ける

すでにお伝えしましたが、仮執行宣言付支払督促を申立てることのできる期限は決まっています。

しかしこの期限は、裁判所が教えてくれるわけではないので、裁判所に直接問い合わせるか、自分でスケジュール管理を行うことが必要です。

強制執行をしても回収できない可能性がある

最終的に強制執行する権利を得ることができても、相手に財産が無ければ強制執行が空振りになってしまう可能性があります。

また、強制執行は支払督促とは別の手続なので、別途申立が必要となり、申立手数料が別にかかることを覚えておきましょう。

支払督促が必要となる代金未払いを防ぐためは「NP掛け払い」の利用がおすすめ

代金の未払いが生じて支払督促の必要性が高まった場合、誰がそれを行うのかという問題があります。新たな業務負担が生じると本来の業務に支障が出てしまう可能性があります。

代金をきちんと回収できるシステムさえあれば、企業は本来の業務に集中することができます。そのためにおすすめするのが、請求業務の全体をアウトソーシングできるNP掛け払いを活用することです。

NP掛け払いは、与信審査、請求書発行、入金管理、督促など一連の請求業務を丸投げすることが可能です。また、遅延、未払い、貸倒の債権保証もされるため、貸倒れとなるリスクも大幅に軽減できます。

代金未払いに対する問題は、このサービスを利用することでスムーズに解決できるでしょう。

まとめ

支払督促は未払いの請求を抱えている債権者にとって有効な手段ですが、事前に流れを把握し、準備することが大切です。

<支払督促で重要になるポイント>

  • 支払督促とは裁判所が債務者に金銭の支払を命じる制度
  • 強制執行できる権利を得られる
  • 支払督促の申立ては自分でできる
  • 費用は通常訴訟の半額
  • 相手からの異議があれば通常訴訟に移行する 

事業を行う上で最大のリスクは代金の支払いをしてもらえないことです。金額が小さくても未払いとなっている請求を放置することはできません。

もちろん、無理やり債務者から取り立てることはできませんので、何度催促しても支払ってくれない相手には法に基づいて債権回収を行うことになります。

支払督促は簡易な手続きで目的の達成が可能な法的手段のひとつです。支払督促の利点と注意点をよく理解して利用を検討するようにしましょう。

著者:森川美琴(司法書士)

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FAQ

  • 支払督促とは何ですか?

    支払督促とは、債権者の申立てに基づいて、裁判所が債務者に対して金銭の支払いを命じる手続のことです。


    通常の訴訟は、当事者双方による口頭弁論や証拠調べを行い、判決をもって強制執行をします。訴訟になると、場合によっては判決が出るまでに何年もかかります。


    これに対し支払督促は、早ければ1ヵ月~2ヵ月で手続が終わり、債務名義を得ることができます。債務名義とは、強制執行ができることを証明する文書のことです。


    つまり支払督促を利用すると、債権者からの申立てのみで短期間で強制執行が可能になるため、早期の問題解決に繋がります。

    支払督促は通常の訴訟手続きに比べて費用も安く済むため、債権者にとっては利用しやすい裁判手続きと言えるでしょう。


    詳しくは「支払督促とは、債権者が債務者に金銭の支払(返還)を要求すること」をご覧ください。

  • 支払督促はどのような人が対象になりますか?

    まず、支払督促の要件についてみていきましょう。支払督促を申立てられる請求には「要件」があります。要件に当てはまらないと、支払督促は利用できません。

     

    要件は以下の通りです。


    ・請求が金銭その他の代替物又は有価証券の一定数量の給付を目的とすること

    ・日本国内で公示送達によらないで送達のできる場合であること


    お話をまとめると、金銭債権を持っていて、かつ支払督促の送達先である相手の住所や居所を把握している人(会社)が支払督促を申立てることのできる対象となります。


    詳しくは「支払督促はどのような人が対象になる?」をご覧ください。

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